1.専ら物とは?
専ら物は、「もっぱらぶつ」と呼びます。専ら物とは「専ら再生利用の目的となる廃棄物」のことを指し、以下の4種類とされています。
- 古紙
- 古繊維
- くず鉄
- 空き瓶類
本来、事業系のゴミとして古紙、古繊維、くず鉄、空き瓶類が排出されるのであれば、古紙および古繊維は一般廃棄物として、くず鉄と空き瓶類は産業廃棄物として処理しなければならないわけです。しかし、古紙、古繊維、くず鉄、空き瓶類を「専ら物のみを取り扱う者」へ処理を委託する場合は例外となるのです。例外の内容は後述致します。
そもそも、専ら物が古紙、古繊維、くず鉄、空き瓶類という4種類ということに違和感を覚えるかもしれません。専ら物の種類からイメージできるのは「再生可能なもの」ということでしょう。それ、正解なのです。では、なぜ、ペットボトルはないの?プラスチック製のパックはないの?なんていう疑問を抱く方もいらっしゃると思います。
その謎を解くカギが、昭和46年10月16日公布の環整43号「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について」にあります。脱線してしまうのでここに詳細は記載しませんが、この環整43号は非常に重要なポイントが詰め込まれているものです。その1つが今回の「専ら物」についてといえます。
4 産業廃棄物処理業
- (略)
- (2) 産業廃棄物の処理業者であっても、もっぱら再生利用の目的となる産業廃棄物、すなわち、古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維を専門に取り扱っている既存の回収業者等は許可の対象とならないものであること。
何と昭和40年代に決められた4種類が今も適用されているわけです。昭和40年代にプラスチック製のパックが今のように大量に使われていたとは思えませんし、ペットボトルが日本で使われ出したのは1990年代のことですから、この4種類とされていたことは仕方がないのでしょう。それにしても今もなお法令改正がないというのは、ある意味すごいと思うわけですが…
2.専ら物のみを取り扱う者への例外~許可不要
先ほども記載しましたが、本来、事業系のゴミとして古紙、古繊維、くず鉄、空き瓶類が排出されるのであれば、古紙および古繊維は一般廃棄物として、くず鉄と空き瓶類は産業廃棄物として処理しなければならないわけです。つまり、一般廃棄物処理業の許可または産業廃棄物処理業の許可を取得しなければ、これらのゴミを処理することはできないはずなのです。
しかし、専ら物のみを取り扱う者はこうした許可が不要となるわけです。つまり、一般廃棄物処理業の許可も産業廃棄物処理業の許可も取得せずに営業できるわけです。すごい例外ですよね。おそらく、産業廃棄物に関する法整備が進んでいく中で、当時の既存業者を保護する狙いがあったのではないか?と考えるわけですが、真偽はわかりません。
ここで、「専ら物のみを取り扱う者」という定義を明記しておきます。
1.専ら再生利用の目的となる廃棄物の収集または運搬のみを業として行う者(廃棄物処理法7条1項但書および14条1項但書)
- 第7条第1項:一般廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、一般廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその一般廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
- 第14条第1項:産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。以下この条から第14条の3の3まで、第15条の4の2、第15条の4の3第3項及び第15条の4の4第3項において同じ。)の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、産業廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
2.専ら再生利用の目的となる廃棄物のみの処分を業として行う者(廃棄物処理法7条6項および14条6項但書)
- 第7条第6項:一般廃棄物の処分を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその一般廃棄物を処分する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみの処分を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
- 第14条第6項:産業廃棄物の処分を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を処分する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの処分を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
今までの文章をお読みいただいてお気づきの方もいらっしゃると思いますが、「のみ」と付いている点が非常に重要なポイントとなります。つまり。専ら物以外の廃棄物も扱う業者は許可を取得する必要がありますので注意が必要です。
3.専ら物のみを取り扱う者への例外~マニフェスト不要
産業廃棄物を扱う場合、排出する際にマニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付する必要があります。しかし、専ら物のみを取り扱う業者へ処理を委託する場合は、このマニフェストの交付も不要としています。つまり、運搬や処分の終了報告が不要ということになりますが、排出者の責任は専ら物のみを取り扱う者が専ら物をリサイクルするまで続きますので、委託先の選択などには十分注意をする必要があります。
ここで、よく誤解されている重要なポイントをお話します。マニフェストは不要でも、契約書の締結は必要です。収集・運搬・処分とも処理委託契約書の締結が必要です。先ほど記載した排出者の責任とも関連しますが、委託業務終了時に業務終了報告を求めることを契約書に記載しておく必要がある点は特に重要です。